既設人孔の開口予定位置に補強鉄筋が配置されている場合があります。施工上の都合で開口位置を変更する場合、補強鉄筋が配置されていない箇所に開口を設けることになります。本稿では、このようなケースにおける対策について考察します。
■矩形人孔(側壁)の場合の検討手順は、以下の通りです。
1.構造計算方法の推定
対象となる人孔側壁がどのような計算方法で設計されているかを推定する必要があります。矩形人孔の場合、「水平フレームによる方法」または「版による方法」で計算されることが一般的です。どちらの方法が採用されているかは、既設の人孔配筋図を基に推定します。
2.既設補強鉄筋の根拠推定
既設人孔に配置されている補強鉄筋が、「構造計算に基づく配置」なのか、「欠損鉄筋相当の配置」なのかにより対応が異なるので、補強鉄筋の配置根拠を推定する必要があります。
「構造計算に基づく配置」
例えば、開口を設けた場合に部材の許容応力が超過するため、その対策として補強鉄筋を配置するケースが考えられます。
「欠損鉄筋相当の配置」
開口により切断された鉄筋断面積に相当する量の鉄筋を開口部周辺に配置する方法で、
RC標準示方書(設計編)2007年制定-P201では、以下のように説明されています
「開口部を設けたために配置できなくなった主鉄筋および配力鉄筋は、各断面において所要鉄筋量を満足するように、開口部の周辺に配置しなければならない。」
3.開口補強筋を切断する場合の対応方法
前述のとおり、構造計算の方法や補強鉄筋の根拠を理解した上で、補強鉄筋を切断した場合にどのような影響があるかを照査する必要があります。
対応方法-1(片持梁で応力照査:水平フレーム構造の場合)
水平フレーム構造で設計された場合、水平フレームの部材を切断した際に片持梁となる状態でも、応力が許容値以下であることを確認することで、開口に伴う影響がないと判断するケースです。
※下図のL2箇所での照査が対象となります。
対応方法-2(片持梁で応力照査:版構造の場合)
版構造で設計された場合、版の一部が欠損することで片持梁となる状態でも、応力が許容値以下であることを確認することで、開口に伴う影響がないと判断するケースです。※下部のL1およびL2箇所での照査が対象となります。
引用)特殊人孔構造計算の手引(R5.4)P4-18/東京都下水道サービス株式会社
対応方法-3(欠損鉄筋相当の追加配置)
開口により切断された鉄筋断面積に相当する量の鉄筋を、あと施工で追加する方法です。この対応としては、以下の方法が考えられます
・(斫り方式)既設人孔の鉄筋被り部を斫り、補強鉄筋を配置する方法
・(防護方式)防護コンにより補強鉄筋を配置する方法
対応方法-4(開口部をFEM解析により照査する方法)
FEM(有限要素法)解析を用いて、開口部周辺の応力分布を詳細に評価する方法です。この手法を適用することで、従来の単純な応力計算では把握しきれない局所的な応力集中や変形の影響を確認することができます。

